夢みたもの
「・・・・や・・」

「ひなこ?」

「嫌!聞きたくない!何も聞きたくない!!」


あたしはめちゃくちゃに頭を振ってそう言った。



記憶の奥底に閉じ込めた、過去の記憶。

両親に引き取られて、今の幸せな生活を送るようになってから、年を追う毎に少しずつ少しずつ・・・・鮮明さを失った。

でも時々、ふとした瞬間に記憶が戻りかける。




思い出したくない。

思い出しちゃいけない。




「やだ・・・!!」

「落ち着いて、ひなこ」


あたしの手を掴む航平の手に力が入る。


「大丈夫!大丈夫だから・・・落ち着いて?」

「・・・・・」

「ひなこ?」


「・・・・怖い・・」



耳鳴りで頭が割れそうに痛い。


過去の自分が、思い出すなと警告している。


どうしたら良いのか分からなくて、ただ苦しくて・・・・涙が溢れた。



「ひなこ」


戸惑ったような航平の声が聞こえた。


「大丈夫だよ、ひなこ」

「・・・・・」


言葉が出てこなかった。

あたしはただ首を横に振ると、空いている方の航平の腕を縋るように握った。


「・・・怖い。怖いの・・・」

「ひなこ」



その次の瞬間。



あたしは、航平の胸の中に包まれていた。



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