夢みたもの
「ごめん・・・わざとじゃないんだ」

「うん」

「ひなこを落ち着かせたくて、でも・・・ごめん」


いつもの航平らしからぬ様子に、あたしは小さく笑った。


「今日の航平、やっぱり何か変だよ?今度は謝ってばっかり」


「怒ってないよ」そう付け加えると、あたしは航平に笑いかけた。



まだ、抱きしめられた時の航平の体温と腕の力が体に残る。

耳元で聞こえた航平の鼓動は、今もあたしの中で響いていて、あたしの心を落ち着かせてくれる。

凄く驚いたけれど、それにも増して安心出来た。



守られている、そんな気がした。



「ありがとう」


あたしは航平を真っ直ぐ見つめてそう言った。


「航平のおかげで、頭痛いの治ったもん。ホントありがとう」

「ひなこ」


航平は、驚いたように一瞬目を見開いた後、嬉しそうに微笑んだ。


「ひなこを守るのは、俺の役目だよ」

「それって・・・『幼なじみ』として?」


上目遣いになりながら、あたしはおずおずとそう言った。


航平に抱きしめられてから、また変に意識しているのか、鼓動が速まっている。

胸の奥が熱くて息苦しかった。


返答を待つあたしに、航平はゆっくりまばたきをすると、いつものようにニッコリ笑って、あたしの頭にポンと手を置いた。


「当たり前だよ?だって、ひなこは俺の・・・大切な大切な幼なじみだからね?」



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