夢みたもの
━・・━・・━・・━


「そういえば、美野里さんって何歳なんですか?」


シュー生地が焼き上がるのを待つ間。

美野里さんが淹れてくれたコーヒーを飲みながら、あたしは気になっていた事を口にした。


「落ち着いてて大人っぽいのに、中身は若いですよね?」

「あら、それって誉め言葉?」


器用に片眉を上げた美野里さんに、あたしは慌てて頷いた。


「も、もちろん、良い意味で・・・」

「ふぅん?」


すらりと長い足を組んだ美野里さんは、ステンレス製の調理台に片肘を突くと、わざとため息を吐いてあたしを見た。


「い~い、ひなこちゃん?いい年した大人の女性に、年齢聞くのはマナー違反よ?」

「あ、ご、ごめんなさい」

「最近、親の風当たりもきつくなったこの微妙〜なお年頃の私に、年齢の話は禁句なの。切なくなっちゃうじゃない?」


胸に手を当ててそう言いながらも、全く気にした様子の無い美野里さんは、楽しそうに笑ってコーヒーを口に運んだ。


「ま、ひなこちゃんから見たらオバサンだけど、一応ギリ20代かな?」

「29歳?」

「そう。三十路に片足突っ込んだ、焦りの絶頂期よ〜」


クスクス笑いながら答える美野里さんは、明らかに今の状況を楽しんでいるようだった。

< 232 / 633 >

この作品をシェア

pagetop