夢みたもの
あたしは幸せだ。
過去の経緯がどういうものであっても、申し分ない両親に引き取られて、可愛い弟が居て、幸せでない筈がない。
・・・でも・・・
「どうかした?」
その声にハッとすると、崇さんが不思議そうに首をかしげていた。
「何か変な事言ったかな?」
「あ、いいえ。そんな事ないです」
「そう?」
眼鏡を中指で押し上げながら崇さんはそう言うと、目尻を少し下げて笑った。
「何か悩み事があったら、僕で良ければ話は聞くから、遠慮なく言ってね?」
「ありがとうございます。でも、大丈夫です」
「・・・そう?」
それ以上、崇さんは何も言わなかった。
眠そうな表情で眼鏡を外すと、目頭を押さえてため息を吐く。
「駄目だね・・・年のせいかな?」
そう呟いて眼鏡を掛け直した時。
トレーにコーヒーカップを乗せて、美野里さんが苦笑しながらやって来た。