夢みたもの
『ひなこが謝る事じゃない』



ユーリはあたしにそれだけ伝えると、ノートをパタンと閉じた。

ノートを閉じるのは、「これ以上会話をしたくない」という意思表示。

何事も無かったかのように紅茶を口に運ぶユーリを見つめながら、あたしは小さくため息を吐いた。



「どうしたの?」

「・・・え?」

「ケンカでもしちゃった?」


隣のソファに座った崇さんが穏やかに微笑んでそう言った。


「ごめんね。余り気にしないで?」

「別に・・・ケンカした訳じゃないです」

「そう?」


そう言って眼鏡を押し上げた崇さんは、あたしとユーリを交互に見ながら穏やかに笑った。


「そういえば、ひなこちゃんはピアノを弾いたりしないの?」

「え?突然何ですか?」

「折角だから、悠里と一緒に弾いたら良いのに?」

「・・・・・」

「悠里に聞いたけど、お母さんはピアノの講師をしてるんでしょ?」

「そうですけど・・・でも、あたしは弾けません」

「そうなの?」


意外そうな表情であたしを見た崇さんは、「ふぅん?」と言って首をかしげた。


「・・・小さい頃、ほんの少しだけ教えて貰いましたけど・・・、一緒に教えて貰った幼なじみが凄く上手で、自分の下手さ加減に嫌気がさしてやめたんです」

「あぁ、そうなんだ?」


崇さんはそう言って小さく笑った。



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