夢みたもの
「それなら良いけど。ねぇ、今日学校で何かあったの?」

「・・・え?・・・何で?」


母の言葉に、頬が一瞬、ピクッと痙攣した。

全神経が集中して母を見つめる。



知ってる筈ない。

航平が何かを話すなんて考えられない。



そう思いながら、あたしは擦れた声を絞り出した。


「・・・何で?・・・何もないよ?」

「そう?それなら良いんだけど」


そう呟いた母は、あたしが緊張した表情で母を見つめたままでいる事に気付くと小さく笑った。


「取り越し苦労ってやつね?航平君に会った時、珍しく落ち込んでるみたいだったの。今のひなこみたいに元気がなくて。それで心配になっちゃった」

「・・・・そう・・」


気付かれないぐらいの小さなため息を吐くと、あたしは胸を撫で下ろした。



大丈夫。バレてない。

航平との事を知ったら、心配性の母は、きっと凄くショックを受ける。

余計な心配はさせたくなかった。


「大丈夫、何もないよ。いつもと同じだから」


あたしはそう言って、無理矢理笑顔を作った。

頬の筋肉がピリピリと痙攣する。

それでも母を安心させられる程度の笑顔を作れたと・・・そう思いたかった。



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