夢みたもの
「昨日‥‥航平にどっちかを選べって言われて‥それであたし‥航平を選べなかったの‥‥」

「何よ それ!?‥大体『選ぶ』って何を?」


「‥‥航平と‥ユーリ‥」


あたしが呟くように答えた時、ホームルームの時間を知らせる予鈴が鳴り響いた。

生徒がバタバタと教室に向かう音がする。

でも、あたしとあたしを唖然と見つめる葵は一歩も動かなかった。


「‥‥ユーリって‥叶 悠里の事‥?どうしてそこに彼が出てくるわけ!?」


訳が分からないというように、葵は首を横に振った。


「あの‥小さい頃の知り合いだったの。最初は気付かなかったけど‥‥」



全てを話す必要は無い。

事実を端的に話すだけ‥

あたしの出生を知ったら‥葵はあたしから離れていくかもしれない‥‥

そう思うと、怖くて話せなかった。



「‥という事は、彼が喋れない事も承知してるのね?」


葵はため息混じりにそう言った。


「‥‥うん」

「それで、同情したって事?」

「違う‥同情じゃない。‥‥ユーリは昔、あたしを助けてくれたの。だから‥‥」

「‥だから、今度は自分が彼の力になりたい‥って?」


その言葉にあたしが頷くと、葵は髪を掻き上げて眉根を寄せ、あたしから視線を逸らした。



< 285 / 633 >

この作品をシェア

pagetop