夢みたもの
「‥‥さ、という訳で、もう湿っぽい話は終わりよ?」


葵はそう言うと、いつものように笑った。


「気分転換に、今日の放課後は茶道部に顔を出しなさい?」


「‥‥え‥でも‥」

「大丈夫。今までずっと一緒に過ごしてきた子達よ?」


「‥‥そうだけど‥」


葵の言葉に、あたしは曖昧に頷き返した。


今、自分が置かれている状況を考えると‥、きっと、自分は招かれざる客になる。

それでも、学校の何処かに自分の居場所があるなら、その可能性に賭けてみたかった。



「あたしって‥全然駄目だね‥」


弁当箱を片付けると、あたしは空いたスペースに突っ伏した。


あたしは相変わらず、誰かに助けて貰っている‥‥

相手が航平から葵に変わっただけで、基本的な処は何も変わっていない。

そう思うと情けなかった。



「そう思うなら、自分で行動しなさい」


あたしの話を聞いた葵は、肩をすくめてそう言った。


「ひなこには出来る筈よ?‥黙って小さくなってないで、堂々としなさい」


「‥‥そうだね」


あたしは小さく頷いた。


幼い頃から、我慢する事が一番だと‥そう学んできた。

何かを望んでも、手に入れる事は出来ない。

それなら、最初から全てを受け入れてしまった方が楽‥‥そう思ってきた。


自分がもっと我儘だったら‥‥

気持ちをハッキリ伝えていたら‥‥

今みたいな状況にはならなかったのかもしれない。


そう思うと、ため息がこぼれた。



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