夢みたもの
━・・━・・━・・━

「‥‥どうしてですか!?」



放課後。

久し振りに活動する茶道部へ足を向けたあたしは、茶室の中から聞こえてきた声に、襖に伸ばした手を引っ込めた。


茶室から聞こえてくるのは結花ちゃんの声。

普段大人しい結花ちゃんの抗議する声に続いて聞こえてきたのは、冷静な葵の声だった。


「何を言ってるの?今までそうだったでしょ?」

「‥‥状況が違います!葵先輩は、雪村先輩の噂‥知らないんですか!?」

「噂?」


自分の名前が飛び出した事に慌てたあたしは、息を飲んでその場に立ち尽くした。

やっぱり‥という落胆と諦めが、頭の中でぐるぐると回りだす。

それでも、足に根が生えたように動けなかった。



「噂って?」


葵の声が聞こえてくる。


「何の噂?」

「雪村先輩は‥、堤先輩と叶先輩で二股かけていただけじゃなくて、他校の生徒とも遊び歩いてる。援交してるって噂も聞いてます」

「‥‥それで?」

「大人しくて従順そうなのに、裏で何してるか分からない。凄く汚いって‥‥皆そう言ってます!!」


結花ちゃんの言葉に、あたしは信じられない思いで目の前の襖を見つめた。



< 290 / 633 >

この作品をシェア

pagetop