夢みたもの
「私は、ひなこを知っているあなた達だからこそ、噂なんて信じる筈ないって思ってたわ」


「‥‥だって‥」


結花ちゃんとは違う声が聞こえた。


「友達も‥あたし達の中にも、堤先輩に告白して振られた子が沢山居るんです。‥でも、堤先輩が雪村先輩を大切にしてるから‥‥そう言ったから、皆泣く泣く諦めたんです。それなのに‥‥今回の噂はひど過ぎます」

「それに、葵先輩だって‥‥」


結花ちゃんの泣きそうな声が聞こえた。


「ずっと雪村先輩に付きっきりで‥‥、そのせいで遅くまで生徒会の仕事をしてるの知ってます!雪村先輩のせいで、皆が迷惑してるんですよ!?それなのに‥、ここで良い顔なんて出来ません」


結花ちゃんの言葉が、あたしに重くのしかかる。

その通り過ぎて、反論する余地も無い。

あたしが小さくため息を吐くのとほぼ同時に、葵の不機嫌な声が聞こえた。


「堤君が誰を好きだろうと、それがあなた達に関係あるの?ひなこが居なければ、自分が選ばれるとでも‥?逆恨みもいい加減にしなさい。‥‥それに、私はやりたくてやってるの。勝手に干渉しないで欲しいわ」

「ほら、練習を始めるわよ?」


葵がそう言って手を打ち鳴らす。

茶室から人の動く気配を感じたあたしは、鞄を握り締めると、その場をそっと後にした。



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