夢みたもの
「‥‥あたし‥?」


確認するように呟いた。


確かに、あたしが引き取られたのは秋が深まった頃だった。

両親に連れられて車から降り立った時。

頬に当たる風が冷たくて‥‥これから始まる生活に不安を感じたのを覚えてる。



あの日。

あたしは生まれて初めて自分の部屋を貰った。


両親に気に入られる事ばかり考えて緊張していたから、想像以上に整えられた部屋で1人になった時、やっと心から笑えた。


大切にされる‥‥

この家に居れば、幸せになれるかもしれない‥そう思った。



「ひなこちゃんが現れた日から、航平は変わったわ」


「でも、あたし‥、航平に何もしてないですけど‥?」


おばさんの言葉に、あたしは首をかしげた。



覚えているのは、隣の家から望遠鏡で覗いていた航平‥‥

驚いて思わず固まったあたしに、ニッコリ笑って手を振った。


そう、あの時から、航平はいつも笑っていた。

優しくて、いつもニコニコ笑っている。

それがあたしの知っている航平だ。

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