夢みたもの
「さっきの冗談のつもりだったのに‥ホントなの!?‥‥誰と!?」


「え‥‥航平と‥」


鞠子の勢いに押されて、あたしは口籠もりながら小さく答える。

答えた後に、頬が熱くなった事に気付いた。


「あ‥でも、別にデートじゃないよ‥‥?」

「なぁに?まだそんな事言ってるの?」


葵が呆れ顔で言った。


「本当‥‥哀れだわ」

「でも‥」


デートなんて。

あたしと航平は、そんな言葉で表現出来る仲だろうか?


一緒に居ると安心する。

一緒に居ると嬉しい。


一緒に居ると‥‥

ドキドキして、胸が苦しくなる。



「ひなこ?」

「え?」

「ぼぅっとして‥どうかした?」


ニヤニヤ笑ってあたしの顔を覗き込む葵。

あたしは慌てて顔を背けた。


「何でもないよ」

「そう?」


2人に顔を見られないようにうつむいたあたしは、小さくため息を吐いた。



航平とキスしてから‥‥何だかおかしい。


前はこんな事で動揺したりしなかった。

毎日が同じように過ぎていく事が望みで‥

それ以外は何も求めない。


航平と一緒に登下校して

葵と鞠子の3人、くだらない話で盛り上がって

両親と雅人と仲良く暮らして‥‥

それで満足だった。



‥‥少し前までは‥



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