夢みたもの
「うん‥‥ずっと前から約束してたの」


「ごめんなさい」とうつむいたあたしに、ユーリは苦笑して首を横に振った。


『気にしないで。ぼやぼやしていた僕が悪い』

「‥‥」


そして、少し首をかしげながら、ユーリは続きを書いてあたしに見せた。


『でも、もし僕の方が早く誘っていたら‥、僕の誘いをひなこは受けてくれた?』

「え?」

『早さだけの問題?』


「‥‥どうして、そんな事言うの?」


あたしはユーリの茶色い瞳を真っ直ぐ見つめた。



本当は、ユーリの質問に一瞬ドキっとした。


ユーリの方が早く約束していたら‥‥

勿論、ユーリとの約束が一番になる。

そうに決まってる。

そうしない理由がない。


それなのに‥‥


そんな当たり前の事を聞かれたのに‥‥

即答出来ない自分。

その事に、戸惑いを感じた。



『ごめんね。困らせるつもりはないんだ』


ユーリは小さく笑ってノートを閉じると、ピアノの蓋を開けてあたしを手招きする。


教室に響き渡る和音。

その和音に合わせて、ユーリはリハビリを始めた。



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