夢みたもの
細く、擦れたユーリの声。

毎日毎日‥

声を出す感覚から思い出して‥‥


今は、音階に合わせて声を出せるようになった。

まだ言葉ではないけれど‥‥

まだ‥擦れた音ではあるけれど‥‥

和音に合わせて聞こえるのは、間違いなくユーリの声。

それだけでも、以前に比べれば凄い進歩だった。



「凄いね。声の通りがどんどん良くなってる」


ユーリと場所を交換しながら、あたしは感心して言った。

和音を弾く事はあたしにも出来るから、ユーリが声を出す事に専念出来るよう、最近はあたしがピアノを弾いている。

こんな事しか出来ないけれど、ユーリの力になりたい。

一緒にリハビリを出来る事が凄く嬉しかった。


「やっぱりユーリは凄いなぁ‥」

『ひなこが手伝ってくれるからね』


あたしは苦笑して首を横に振った。


「あたしの力なんて全然‥‥」

『そんな事ないよ』

「だって‥ピアノ弾いてるだけだもん。アドバイスも何も出来ないし‥‥」

『側に居てくれるだけで、凄く心強いよ』


『それに』と続けたユーリは、一瞬、迷うように手を止めてあたしを見た。


「‥‥何?」


あたしが首をかしげると、ユーリは小さく笑って再び手を動かす。


『それに‥‥早く喋れるようになりたいんだ』



< 434 / 633 >

この作品をシェア

pagetop