夢みたもの
思いがけず力が出た。

油断していたのか、目つきの鋭い男は、よろけて後ろの生垣に尻餅をつく。


「‥‥!!」


その隙に、あたしは再び走り出した。

少しでも早く、少しでも遠くに‥‥


大通りに出れば大丈夫。

そう思った。


「‥あぁっ!」

「バカっ!追えよ!?」


2人のやり取りが背後から聞こえる。



‥‥逃げなくちゃ‥

早く、早く‥‥早く‥



頭の中はその事で一杯だった。

その事以外、考えたくなかった。




「‥‥!?」


また、携帯が振え始めた。


航平だ。

航平しか考えられない。



でも‥‥

背後から迫ってくる足音に、携帯を開く余裕なんて無かった。


「航平‥早く‥‥」


早く来て。

助けて!!


息が切れて、言葉が最後まで続かない。


心の中で

声にならない叫びが広がっていく。



「‥‥あっ‥!!」


足がもつれる。

よろけたあたしは、地面に手をつく瞬間、携帯を放り投げていた。


少し離れた処に転がった携帯。

点滅する光と一緒に小窓に表示された名前。


それは、


【ユーリ】だった。



< 449 / 633 >

この作品をシェア

pagetop