夢みたもの
「‥‥ユーリ‥?」


一瞬。

茫然と呟いた。



信じられない。

ユーリが、電話をかけてくるなんて‥‥



「おい!」

「‥‥!!」

「もう、追いかけっこは止めようぜ?」


目つきの鋭い男が、肩で息をしながら言った。

眉根を寄せて、不機嫌そうにあたしを見下ろす。


「逃げんなよ」

「‥‥」


凄味のある口調に、ピクリと肩が震えた。


「黙って付き合えばいぃんだよ」


威圧的にそう言って、目つきの鋭い男はあたしの前に腰を下ろす。


「‥なに?震えてんの?」


「‥‥ごめんなさい」


それしか言葉が見つからなかった。



逃げ出したい。

‥‥でも、

逃げたらもっと酷い事をされるかもしれない。


そう思うぐらいの雰囲気を醸し出す男。


怖くて‥

怖くて‥‥涙が溢れた。



「あれ、泣いちゃったよ?‥‥ホント、昔から世間知らずのお嬢様って感じで可愛いよね」

「‥‥!?」


手を伸ばしてくる男から、それでも逃げたくて‥‥

座り込んだまま、あたしはずりずりと後退った。


すぐに、放り投げた携帯に指が当たる。

あたしは、もう静まり返った携帯を胸元で握り締めた。




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