夢みたもの
幸せな日々。


幸せで‥

幸せ過ぎて‥‥


夢の中に居るみたいだった。



時々‥

施設での事を夢に見て、うなされる事もあったけれど‥‥

目を開けると、そこにはいつも‥ユーリやその家族が居た。


「大丈夫‥‥心配しなくて良いのよ?」


おばさんが涙を拭いて頭を撫でてくれる度‥‥

母の温もりを感じた。


いつの頃からか、ユーリが一緒に眠ってくれるようになって‥‥

あたしが眠りにつく迄、色んな話をしてくれた。

小さな声で歌を歌ってくれた。



そのどれもが、施設では手に入らなかった事。


幼いあたしにとって、ユーリの家族との生活は、ずっと夢見ていた生活そのものだった。


「僕は‥大きくなったら、お母さんに負けないぐらい有名なピアニストになるんだ」

「ピアニスト‥?」


夜。

いつものように枕を並べて横たわると、ユーリはそう言って微笑んだ。


「音楽は、聴く人の心に響くものでなくちゃ駄目だって‥‥お母さんがよく言ってる」

「うん?」

「だから僕‥、聴いた人が元気で笑顔になれるようなピアノが弾けるようになりたい」

「うん」

「皆がいつも笑っていられたら‥‥凄く良いと思うからさ?」


嬉しそうに話をするユーリにつられるように、幼いあたしも笑って頷き返した。



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