夢みたもの
「これは‥?」


崇さんの視線の先にあったのは、テーブルの上に置かれたウサギのぬいぐるみ。

腕を伸ばしてぬいぐるみを手にすると、崇さんは小さく首をかしげる。


「このぬいぐるみ‥‥」

「あ、それ‥あたしの」

「ひなこちゃんの?」


「そっか‥」そう呟くと、崇さんは幼いあたしにぬいぐるみを手渡した。


「僕の部屋にぬいぐるみなんてあったかな‥って、驚いちゃった」

「あたしの宝物なの」

「そう。可愛いぬいぐるみだね」


「お母さんがくれた物だから‥」


「そっか‥、でも‥‥」


そこで言葉を切ると、崇さんは寂しそうに微笑む。

そして、幼いあたしの頭にぽんと手を置くと、ぬいぐるみに視線を落として口を開いた。


「きっと、このぬいぐるみの分だけ‥‥」

「‥え?」

「このぬいぐるみが汚れた分だけ‥‥ひなこちゃんが悲しい事に耐えてきた‥って事なんだね?」

「‥‥」

「よく頑張ったね」

「‥‥」


「もう我慢しなくて良いんだよ?」そう付け加えた崇さんは、今度は幼いあたしの頭を撫でて、優しく笑った。


「この家に居る限り、ひなこちゃんに悲しい思いはさせないよ?だから、安心していい」

「‥‥」


優しくて温かい言葉。


それは、そっと涙を拭ってくれた、崇さんの手の温かさからも伝わってくるものだった。



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