夢みたもの
「今はICUに居るけど、症状は落ち着いてるって」

「‥‥」

「ただ‥」


口をつぐんだ航平。

言うか言うまいか‥悩んでいるのが分かる。


「ただ‥‥何なの!?」


不安で胸が押し潰されそうだった。

それでも、聞かない訳にはいかない。

あたしは航平の手を強く握り締めて言った。


「お願い‥‥教えて」


一瞬目を見開いた航平は、それでも迷うように視線を彷徨わせたけれど、やがて、小さくため息を吐いてあたしを見た。



「叶はね‥‥」

「‥‥」

「叶は、頭と腹部の損傷が酷いらしくて‥‥」

「‥‥」

「意識が戻るか分からないらしい」


「もしかしたら‥」そう続けた航平は、そこで言葉を切った。



それ以上は聞かなくても分かる。

聞きたいとも思わなかった。


「‥‥」


込み上げてくるものを抑え切れない。

視界がぼやけて‥‥

目から涙があふれ出て止まらなかった。


「どうしよう‥‥あたしのせいだ」

「‥‥」

「あたしが、道路に飛び出したりしたから‥‥」


口をついて出てくるのは、後悔の言葉だけ。


どうしたら良いのか

これからどうなるのか

何も分からなくて、不安になる。


「‥‥ひなこ‥」


そんなあたしの手を握り締めて、航平は、ただ黙ってあたしを見つめていた。



< 485 / 633 >

この作品をシェア

pagetop