夢みたもの
「でも、日記が何処にあるか‥‥あたし、分かんないよ?」


あたしはそう言って首をかしげた。



母が何処にしまったのか想像もつかない。

日記が見付からなければ意味がなかった。



「おばさんの事だから、たぶん‥誰の目にも触れないような処に置いてあると思うけど‥」

「分かんない」


あたしはため息をついて肩を落とした。

今まで、自分の家とは言っても、自分の部屋とリビング、生活行動範囲内しか出入りしなかった。

それが突然、両親のテリトリーに入って行ったら、両親だって驚くし、そんな大胆さは持ち合わせていない。



「おばさんしか触れない場所って気もするけどなぁ‥」


航平はそう言うと、あたしに笑いかけた。


「でもホント、前向きになったね」

「‥え?」

「以前のひなこなら‥すぐ逃げ出してたでしょ?」

「‥うん‥」



確かに、以前なら‥‥


知りたくない事。

聞きたくない事。

嫌な事全部に蓋をして、目をつぶってきた。

知る必要は無いと思っていた。


でも、今は違う。



「皆があたしを大切にしてくれるから‥‥あたしも、それに応えたいの」

「そっか‥」


小さく呟いた航平は、嬉しそうに微笑む。


「そんなひなこが好きだよ」

「‥‥」

「誰よりもひなこを想ってる」


航平はそう言って、繋いだ手に力を込めた。



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