夢みたもの
「大丈夫かなぁ‥‥」

「大丈夫だよ」


あたしの隣で航平が明るく言う。


「ほら‥風邪引くから、家に入ろ?」


あたしの背中を押す航平。

タクシーが見えなくなったのを見届けると、あたしは航平に押されて家に戻った。



「それにしても、凄い散らかりようだなぁ〜‥」


リビングを見回して、航平は感心したように言った。


「大怪我しなくて良かったよ」

「うん。でも、何で倒れたんだろ‥?」


ピアノに寄りかかるように倒れかけた本棚を見て、あたしは首をかしげた。


あたしの身長より少し高いぐらいの本棚。

物が一杯一杯に詰め込まれている訳じゃないから、バランスが良いとは言えないけれど、母がレッスンで使う教材がしまってあって、そう簡単に倒れるような物じゃない。


「たぶん‥あれじゃない?」

「あれ?」


航平が指差した先にあったのは、本棚とピアノの傍にある、実際に乗って遊べるタイプの車の玩具だった。


「ほら‥スカーフが車輪に絡まって、本棚の下の処にも引っ掛かってるでしょ?」


航平はそう言って車を引っ張り出した。


「本棚も上の方に集中して使ってたみたいだしね」

「そっか‥」

「でもまぁ‥ホントに大事にならなくて良かったよ」


航平はそう言うと、あたしに笑いかけた。


「じゃぁ、ささっと片付けようか?」



< 540 / 633 >

この作品をシェア

pagetop