夢みたもの
━・・━・・━・・━

「そう言えば‥‥さっきの航平、凄かったね」


散らばった楽譜を拾い集めながら、あたしは本棚を直している航平に向かってそう言った。


「雅人を診てくれたり‥病院に電話したり‥‥格好良かった」


「えぇ‥!?何、突然!?」


緩んだ本棚のネジを締め直そうと、ドライバー片手に作業していた航平は、慌てたような声を上げた。


「え‥?何って‥別に。ただそう思ったの。さっきだって‥あたしは何も出来なかったのに、航平は落ち着いてて‥ホント凄い。だから、格好良いなぁ‥って」


航平の方を振り返ると、あたしは首をかしげた。


「どうかした?」

「いや‥別に」


そう呟いた航平は、あたしと目が合うと、少し頬を染めて視線を逸らした。


「え‥何で照れるの?」

「‥‥」

「何か変な事言った?」


「ひなこさぁ‥‥」


ため息混じりにそう言うと、航平はあたしを真っ直ぐ見た。

その瞳が困ったように揺れる。


「素直な処はひなこの長所だと思うけど‥‥」


そう言って立ち上がった航平は、あたしの目の前に腰を下ろして小さく笑った。


「あまり素直過ぎるのは‥酷だよ」

「‥え?」

「男って単純だからさ‥‥期待しちゃうよ」

「‥‥」

「期待して良いの?」


向けられる真っ直ぐな瞳。

頬が一気に熱くなった。



< 541 / 633 >

この作品をシェア

pagetop