夢みたもの
その優しさに甘えて、あたしは昨夜、航平に日記を託した。


何が書かれているのか気になって仕方ないのに、読むのが怖いというジレンマ。

それを抱えたまま、気付けば夜が明けていた。



「ひなこ?」

「え?‥あ、何!?」


その声に慌てて顔を上げると、航平が苦笑してあたしを見つめていた。


「大丈夫?」

「うん‥ごめん」

「別に良いよ。それより、タクシーで行こうと思うんだけど‥いい?」

「え?‥うん」



いつの間にか大通りに出ていた。

航平はさっとタクシーを止めると、あたしを押し込めるように乗せる。

そして、行き先を書いたメモを運転手に見せると、タクシーはゆっくりと動き始めた。


「タクシーで行くなんて‥遠いの?あ‥でも、電車で行かないって事は、そんなに遠くない‥?」


柔らかい座席に身を委ねたあたしは、やっと日記から意識を逸らした。

そんなあたしに、航平は優しく微笑む。


「さすが、鋭いね」

「‥‥」

「まぁ‥電車でも良かったんだけど、ひなこに逃げられたら困るしね」

「逃げる‥?」


思わず顔をしかめたあたしに、航平は小さく頷いて笑った。


「折角のデートだし‥、ひなこの気が変わったら困るからね」



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