夢みたもの
━・・━・・━・・━

「知らなかったの?」


相変わらず目を丸くした佐知先生は、そう言って首をかしげた。


「約束通り‥実のお母様が迎えに来たのよ?」

「‥‥」

「その話、先生方からひなこに話さなかったんですか?」


あたしの代わりに航平がそう言った。


「引き取られる前に、そういう話って出るものだと思うんですけど?」

「えぇ‥普段ならそうするんだけど」


ため息を吐いた佐知先生は小さく苦笑する。


「あの時は確か‥園長先生が『離れ離れになっていた期間が余りにも長い。お互いの顔さえ分からないのだから、実の親子である事を告げるのは、今後の様子を見てからの方が良い』って仰って‥‥確かにそうだと思ったの」

「‥‥」

「でも、まさか‥‥こんなに長い間、実の親子だと名乗っていなかったなんて‥‥」


信じられないというように首を横に振った佐知先生は、あたしの視線に気付くと、少し慌てたように笑った。


「まぁ、でも別に‥言わなかった事が悪い訳じゃないわ」

「え‥でも‥」

「だって、その話を知らなくても、ひなこちゃんは幸せになれたでしょう?それだけご両親に大切に育てられたという事。素敵な事だと思うわ」

「‥‥」

「きっと‥何か事情があったんじゃないかしら?」



あたしを安心させる為か、穏やかに笑った佐知先生に、あたしは何も返せなかった。



━・・━・・━・・━


< 565 / 633 >

この作品をシェア

pagetop