夢みたもの
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「1人で大丈夫?」

「うん」

「もし不安なら‥‥」

「大丈夫だってば」



家の門の前。

心配そうな視線を投げ掛ける航平に、あたしは笑って首を横に振った。


「お母さんと話すだけだもん」



肩にかけた鞄に自然と手が伸びる。

鞄越しに感じるその存在感に、あたしはほっと息を吐いた。



ここに、確かにある。


おじさんの日記。

過去から届けられたメッセージ。


それは

ただ、あたしの出生について書かれているだけじゃなかった。


母と崇さん

おじさん、おばさん

皆の愛情が痛い程伝わってくる

愛情に溢れた日記


切なくて

嬉しくて

幸せで‥‥


無性に母と話がしたかった。


母子として

ちゃんと向き合って

今までの分を取り返すぐらい

話したい事が一杯ある。



「‥そっか」


あたしの頭を撫でて、航平は優しく笑う。


「それじゃ、何かあったら言って?」

「うん、ありがと」


あたしはそう言って航平に手を振った。



いつもと同じドアノブ

いつもと同じ風景


でも、その見慣れた場所が、今日はいつもと違って見える。



「ただいま」


その言葉の重さを感じながら、あたしは家に帰った。



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