夢みたもの
「ねぇ、崇さんも帰っちゃうのかなぁ!?」

「‥え?」

「崇さんって、元々外国で活動してるんでしょ!?だったらやっぱり‥‥一緒に帰っちゃうの?」

「‥‥」

「鞠子、そんなの嫌だな‥‥」

「‥‥」


あたしと葵は思わず顔を見合わせる。

そして次の瞬間、吹き出すように笑った。


「ちょっとぉ‥何で笑うの!?」


不満気に頬を膨らませる鞠子。

その頭をクシャクシャに撫でながら、葵は片手で涙を拭った。


「鞠子ったら‥本当最高ね!!」

「なにそれ?」

「その自己中な発言が役に立つなんて、思ってもみなかったわ」

「もぉ‥何なの、葵ちゃん。‥‥って言うか、手、どけてよぉ‥」


葵の手から逃れようと手をばたつかせた鞠子は、あたしの視線に気付くと、少し照れたように笑った。


「ひなこ‥ちゃんと笑えたね」

「‥え?」

「ひなこが笑ってないとさ、困る人が一杯居るんだからね」

「‥鞠子‥」


あたしを気遣ってくれた。

その事が嬉しくて、少しくすぐったい。


「ありがと」


あたしがそう言って笑うと、相変わらず鞠子の頭を撫でながら、葵がしみじみと口を開いた。


「鞠子も成長したわね」

「あ、何その言い方!?」

「誉めてるのよ?」

「なんか引っ掛かるなぁ‥‥」


鞠子と葵はそう言い合いながらクスクス笑う。

その雰囲気に引き込まれるように、いつの間にかあたしも笑っていた。




< 607 / 633 >

この作品をシェア

pagetop