夢みたもの
「雰囲気が変わったね」


呟くようにそれだけ言うと、ユーリはあたしを真っ直ぐ見つめる。

その瞳は、何の感情も表していなくて‥‥ただ、静かだった。



「上手くいった?」

「‥‥うん‥」


どんな顔をしたら良いのか分からない。

小さく頷いたあたしに、ユーリは一息吐きながら小さく頷き返した。



「そっか‥‥」

「‥あの、あの‥‥ごめんね」


うつむきながらそう言った。



再会してまもなく、あたしに告白してくれたユーリ。

もうずっと前から‥ユーリへの返事を誤魔化し続けていた。

ユーリの優しさに甘えて、答えを引き延ばして‥‥



「ごめんなさい」

「謝らなくていいよ」

「‥‥」

「こうなるだろう‥って、分かってたから」

「‥‥!?」


その言葉に顔を上げると、ユーリが少し寂しそうに微笑んでいた。


「そう‥分かってた。でも、気付かないフリしてたんだ」

「‥‥」

「彼に惹かれてるのは分かってたけど、ひなこがその気持ちに気付いていないなら、僕にも入り込む隙はあるんじゃないか‥‥って」


「でも‥」そう続けたユーリは、あたしを見て苦笑する。


「あの事故の時‥‥2人組に絡まれたひなこは彼の名を呼んだ。‥‥僕の名前じゃなかった」

「‥‥」

「どんなに自覚していなくても、心の奥底で求めてる存在。ひなこにとってそれは、僕じゃなかったんだ」

「‥‥ユーリ‥」



返す言葉が見付からなかった。



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