夢みたもの
「僕達は、離れていた時間が長過ぎた」


ユーリはそう言葉を続けた。

淡々と、そして‥少し寂しそうに笑う。


「もう‥あの頃と違う。ままごとじゃなくて、大人の恋が出来る歳なんだよね」


そこで言葉を切ったユーリは、あたしと目が合うと小さく苦笑した。


「でも僕は、あの一番幸せだった頃から変わりたくなかったんだ」

「あの頃‥」


そう呟いたあたしに、ユーリは小さく頷き返した。


「両親と姉が居る。手入れの行き届いた家と庭があって、時々‥沢山のお土産を持った崇おじさんが帰ってくる。そして、僕の隣にひなこが居る。‥‥あの頃が、一番幸せだった」

「‥‥ユーリ‥」

「あの頃の幸せを‥もう一度取り戻したかった」

「‥‥」

「全部は無理だったけどね」


自嘲的に笑うと、ユーリは小さくため息を吐く。

その‥諦めを含んだ哀しげな様子に胸が痛くなった。



「ごめんね。あたし‥‥結局、ユーリの役に立てなかった」

「そんな事ないよ」


少し驚いたように目を見開くと、ユーリはすぐに穏やかに笑った。




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