夢みたもの
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ユーリが居なくなる。


それは、想像以上に堪えた。

頭で理解出来ても、気持ちが付いてこない。


ずっと一緒に居られると思っていたのに‥‥


「‥‥寂しいな‥」



病室を後にしたあたしは、小さく呟いてため息を吐いた。


でも‥

未来に向かって踏み出そうとしているユーリ。

そのユーリを引き止める権利はあたしには無いし、そんな事は出来ない。

あたしに出来るのは、ユーリを笑顔で送り出す事だけだ。



「ひなこちゃん?」

「‥‥!?」


うつむきがちに歩いていたあたし。

その声にハッとして顔を上げた。


「どうしたの?元気ないみたいだけど‥?」

「‥崇さん‥‥と、航平‥!?」


穏やかに笑う崇さんの隣に立っていたのは、間違いようもなく航平だった。


「どうして?」

「病院の前で会ってね。さっきまでお茶してたんだ」

「そう‥ですか」


何だか気まずい。

あたしは肩に掛けた鞄の持ち手を握り締めた。



崇さんが‥‥あたしのお父さん。


それを知っているから‥‥どんな顔をしたら良いのか分からない。

でもきっと‥‥


あたしは航平と話す崇さんを盗み見ると、小さく息を吐いた。


そう。

きっと‥‥今までのままで良い。

変わらない方が良いんだと思う。


崇さんはずっとそうしてきた。

そしてそれは、きっと‥これからも変わらないから‥‥




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