夢みたもの
「ひなこちゃん、どうかした?」

「‥‥?」

「僕の顔‥何か付いてる?」

「‥え!?」


崇さんの言葉に、あたしはハッとして慌てて視線を逸らした。

無意識に見つめ過ぎた。

恥ずかしくて顔が熱くなる。


「ごめんなさい。ぼーっとしちゃって‥」

「謝らなくていいよ。ひなこちゃんみたいな可愛い子に見つめられるなんて、こんな嬉しい事ないしね」

「‥‥」


頬を擦って首をかしげた崇さんは、その手を離すと穏やかに笑った。



「そう言えば、ウィーンに帰る話‥‥悠里は話してなかったんだって?」

「‥え?」

「彼から聞いた」


崇さんの視線の先。

相変わらず航平があたしを見つめている。

心配そうな瞳。

「大丈夫?」と問いかけてくる瞳に、あたしは小さく頷いて笑い返した。


「何かビックリしちゃって‥‥もうずっと、日本に居ると思ってたから」

「うん‥そうだよね。悠里も気が利かないなぁ‥」

「あ‥いえ、ユーリの気持ちは聞きました。だから良いんです。ただ‥‥寂しいなって思うだけで‥‥」

「そうだね」


崇さんはため息を吐くと、寂しそうに笑った。



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