夢みたもの
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それからの日々はあっという間だった。



退院したユーリは、残された約2週間を、以前と同じように学校とSTRAUBで過ごした。

声が出るようになったからか、退院後のユーリの周りには、以前と違って女子が集まる。

あたしとユーリが一緒に過ごす時間は、自然と短くなった。



「情けない顔ねぇ‥」

「‥‥」


葵がため息混じりに苦笑した。


教室の窓から見える中庭。

そのベンチに座ったユーリの周りには、今日も5,6人の女子が取り囲んでいる。

あたしは窓枠に頬杖を付いて、思わず唇を尖らせた。


「‥‥何か、面白くない」

「‥え?」

「皆、今まで近付きもしなかったくせに」

「‥‥」

「後1週間しか日本に居ないのに‥‥」

「何よそれ?」


吹き出すように笑った葵は、あたしの頭をクシャクシャに撫でた。


「捨てられた子犬みたいな顔して‥‥ひなこったら、可愛いわね」

「‥‥」

「別に、これが最後じゃないんだから」

「それはそうだけど」

「でも、ひなこがヤキモチなんて新鮮だわ」


「ただ‥」そう続けた葵は、あたしの頬を指で突くと、耳元で声を落とした。


「気を付けた方が良いわよ、ひなこ?」

「‥‥?」

「ひなこには、ひなこ以上のヤキモチ焼きが付いてるんだから」


「それ、誰の事?」

「‥‥!?」


その声に振り返ると、航平がニコニコ笑って立っていた。


「‥こ‥航平‥」

「ねぇ、誰がヤキモチ焼きだって?」

「あら‥それは自分の胸に手を当てて、よぉ〜く考えてみると良いわよ」

「相変わらず、一之瀬さんは厳しいなぁ〜」

「私は優しさの安売りをしないの」


葵はそう言うと、ツンと横を向いた。



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