夢みたもの
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「色々ありがとう」


ユーリはそう言って笑った。


ザワザワと沢山の人が行き交う空港。

ひっきりなしに搭乗案内のアナウンスが聞こえてくる。

沢山の人が別れを哀しみ、再会を喜ぶそこで、あたしは泣きそうになるのを堪えて立っていた。


「そんな顔しないでよ、ひなこ」

「だって‥」

「これが最後じゃないんだから」

「‥‥」


あたしの頭にポンポンと手を置いて、ユーリは小さく笑った。


「また会えるよ。今度はいつでも」

「‥‥うん」


それ以上の言葉が続かない。

言葉を続けようとすれば、涙がこぼれそうだった。



「短かったけど、楽しかったな‥」


ユーリは呟くように言って笑った。


「やっぱり、無理言って日本に来て良かった‥って思うよ」

「‥‥」

「ひなこと会えて、一緒に過ごす事が出来た。‥‥それは、僕のこれからを支えてくれる」

「ユーリ‥」

「頑張るよ。ひなこに認めて貰えるように‥‥もっと大きく成長出来るようにね」

「‥‥」

「だから、ひなこもちゃんと‥自分の道を歩むんだよ?」

「‥‥うん」

「もう2度と過去に囚われたりしちゃいけない‥‥これからを大切にね」

「‥うん‥」


あたしは何度も頷き返した。

胸が苦しくなって、我慢していた涙がこぼれる。

あたしは慌ててユーリから顔を逸らした。


「泣かないで、ひなこ」


ユーリの困惑した声が頭上から聞こえる。

うつむいたあたしの頭を抱き締めるように、ユーリが腕を伸ばす。

そして、細くて綺麗な指があたしの頬の涙を拭った。



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