夢みたもの
「ひなこに泣かれると‥‥困るよ」

「‥ごめん‥」


あたしは、涙を拭って出来るだけ笑顔を作った。

涙でぼやけた視界の中で、ユーリが穏やかに笑い返してくれる。



「別れはやっぱり‥笑顔でないとね」

「うん」


頷き返したあたしに、ユーリは嬉しそうに笑って頷いた。



「お別れは済んだかな?」

「‥‥?」


その声に振り返ると、崇さんと航平が並んで立っていた。


「悠里、荷物は大丈夫かい?」

「もう預けてあります」

「そっか‥じゃぁ、そろそろだね」


その言葉に、あたしは思わずユーリを見上げた。



別れの時間



これが最後じゃないと分かっているのに、胸が締め付けられるように痛くなる。


襲ってくる喪失感。

寂しくて‥‥苦しい。



「また‥‥そんな顔する」


ユーリが苦笑してあたしを見つめた。


「そんな顔されたら、放っておけないよ」

「‥え?」

「‥‥あ‥!!」


航平の声が聞こえた‥‥と思った瞬間。

あたしは、息が出来ないぐらい、ユーリに強く抱き締められていた。



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