夢みたもの
鼓動が聞こえてきそうな程の距離。

ユーリはあたしの肩に顔を埋めて、その腕に力を込める。


「僕は‥何処に居ても、ひなこの味方だよ」


そう耳元で囁いたユーリ。

あたしの頬にキスをして身を起こすと、ニッコリ笑った。


「やっぱり‥前に言った事、撤回しておく」

「‥え?」

「僕は諦めない」


ユーリはあたしに笑いかけると、その視線を航平に向けて口を開いた。


「人は変わる。だから‥今後、ひなこが心変わりする可能性だって充分ある」

「え!?‥‥ちょ、ちょっと‥ユーリ?」

「僕は、ひなこに認められるようなピアニストになって戻ってくる。ひなこが僕を好きにならずにはいられないような男になるよ。‥‥だから、待ってて」

「‥‥」


余りにも綺麗に笑ったユーリに、思わず頬が熱くなる。


「ひなこ」

「‥‥!?」


突然、腕が強い力で引っ張られる。

あたしの腕を引っ張って脇に退かすと、航平がニッコリ笑ってユーリに対峙した。


「言ってくれるね」

「勝てない勝負だとは思ってない」

「でも、現時点で‥俺の方がリードしてる。これからも‥‥手放す気ないから」

「うん。でもそれは‥数年後のひなこの気持ち次第だよ?気持ちの変化は、どうする事も出来ないからね」


「‥‥ちょっと、2人共‥」


聞いているこっちが恥かしくなる。

思わず声を上げたあたしの隣で、崇さんがクスクス笑った。


「崇さん?」

「ごめん、ごめん。‥‥いや、何か若いな〜と思って」

「もぅ‥恥かしいから止めさせて下さい!」

「いいんじゃない?悠里があんな風にやり合うなんて‥初めて見たよ」

「‥‥」

「どうなる事かと思ったけど‥‥日本に来て良かった」

「‥‥」

「本当に良かったよ」


2人を見つめながら、崇さんは嬉しそうに笑った。



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