夢みたもの
「そこの2人、話は済んだかい?」


崇さんの言葉に、顔を突き合せていた2人が振り返る。


「そろそろ時間だよ」

「あぁ‥すみません」


航平が頭をかきながら苦笑した。


「まぁ‥結論は数年後に持ち越しって事で」

「ひなこの気持ち次第だけどね」


「‥なっ‥」


続くユーリの言葉に、あたしの鼓動がまた大きくなる。


「もぅ‥何言ってるの!?2人してふざけないで」

「ふざけてないよ」


ユーリがそう言って笑う。


「僕の気持ちは変わらない。数年後、ひなこを振り向かせてみせるよ」

「‥‥」

「でもそれまで‥ひなこの事は彼に任せたから」

「‥え?」

「彼なら‥僕が居ない間、ひなこを支えられる。ひなこを任せられる、唯一の男だから」

「‥‥」

「待ってて、ひなこ。必ず帰ってくる。‥‥今度こそ、忘れないで」


昔。

施設の前でユーリがあたしに言った言葉。

その言葉を、あの時と同じように耳元で囁くと、ユーリは顔を上げて笑った。


「じゃぁ、またね」

「‥‥ユーリも‥」


もう泣かない。

あたしは精一杯の笑顔を作った。



「またね‥ユーリ、崇さん」


笑顔で手を振って搭乗ゲートに消えて行く2人。

その姿が見えなくなるまで、あたしはずっと手を振り続けた。



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