令嬢と婚約者、そして恋を知る


「それじゃあ改めてルーカスの婚約成立ってことで!」
「何を仕切ってるんだ」
「ふふ、改めておめでとうございます」
「ありがとうございます」

 余談だが、噂の発端となったエンリックとアンヌ嬢のデートへの同行、その役割を与えてきた母上の指示は意図的なものだったということが後日判明する。

 婚約者にベタ惚れのくせその立場にあぐらをかいている息子に業を煮やしていたようで、エヴェリンに想いを伝えるよう焚き付ける目的でしばらく会えないよう画策、淑女教育に便乗したという。噂が立ったことで家名に傷をつけることとなったのは両親ともに大して気にしてはいない様子ではあったが、まさかエヴェリンの方が追い詰められるとは思いもよらなかったと、母上は彼女を抱き締めて嫌いにならないでと半ば泣きながら詫びていた。

 誤解を解くため義理の母娘で社交界に出て大袈裟なくらいに仲良く振る舞うようになったことをきっかけに、本当にこれまで以上に親しい母娘になるのだから未来というものは読めないものだ。

 そうしたあれこれをしてはみても、噂はすぐには消えないだろう。私が彼女に真摯に向き合ってさえいればなんとかなる、だなんて楽観的には考えていない。それでも地道に根回しをしたりひとつひとつ訂正をして、実直に対処していくつもりだ。


「私のエヴェリン。愛しているよ」

「わたしも、お慕いしております」


 彼女を傷つけた罪は消えないが、本当の意味で気持ちの通った恋人となれた事実は私にとって何よりのことであり、もう失いかけるような失敗などしないと強く誓う。


 ――何があってもこの手だけは離さない。

< 54 / 54 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:18

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

王は断罪し、彼女は冤罪に嗤う

総文字数/8,584

ファンタジー16ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
国王が王妃を断罪した。 それはまるで、何十年と前の、 当時王太子とその恋人だった自分たちが、 婚約者だった少女に行ったのと同じ行為。 国王は見知らぬ少女をはべらせるべく そばに呼び込む。 しかし彼女は、笑って首を振る。 「お好きですわね、真実の愛」 過去、現在と、 大義名分のように国王が口にした 〝真実の愛〟を、嘲笑うのだった。 ----- 「わたしは殺され、あなたを殺す」 と同じ国が舞台です。
わたしは殺され、あなたを殺す

総文字数/11,195

ファンタジー17ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
底辺貴族と呼ばれる身分のセレニカは、 アカデミーで王太子と出会い、親しくなった。 しかし面白く思わない者に呼び出され、 小言を並べられる日々に心は疲弊する。 彼には婚約者がいるのだ、 育んでいるのは友情とはいえ 見咎められるのも当然だろう。 離れようとする彼女に、彼は言った。 「セレニカを愛している」 婚約は破棄するからと真摯に告げられ、 身分違いの二人は恋仲となる。 だというのに、彼は卒業の場で宣言するのだ。 婚約者と結婚する、と――。
誓ったはずの、きみへの愛

総文字数/42,600

恋愛(その他)41ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
「メリッサ、婚約を解消しよう」 親に決められた婚約者に別れを切り出したのは、 致し方ないことだった。 幼い頃から一緒で、大切に想っていたけど、 だけど、だからこそ、許してはいけないのだと思った。 今にも泣き出しそうな顔に、胸が痛んだ。 それでもこれは彼女のためでもあるのだと、 罪のない令嬢を虐げ、信頼を裏切った彼女を 改心させるためなのだと、思っていた。 あの泣きそうな顔が、浮かんでは僕を責める。 信じきれなかった。繋いでいた手を離してしまった。 僕はきみを、愛していたはずなのに――。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop