おうちかいだん
「いたっ!」
右のアキレス腱に鋭い痛みを感じて、残り4段という高さからバランスを崩して、私は1階へと転がり落ちた。
大した高さじゃなかったから良かったけど……それでも床に打ち付けた場所が痛い。
「な、なになに!? 一体どうしたの!? なんの音!?」
私が転落した音を聞きつけて、お母さんが慌てた様子で台所から出て来た。
「か、階段を踏み外しちゃった……なんでもないよ。いてて……」
とは言うものの、あまりの痛みで床に倒れたまま起き上がれなくて。
心配そうに見詰めるお母さんを見上げて、そう言うのが精一杯だった。
「なんでもないって……あーあ、足を切ってるじゃない。血が出てるわよ」
「え? 嘘……血?」
お母さんが指さした場所はアキレス腱。
痛みがあったと思ったけれど、まさか切れてるとは思わなかった。
傷はそれほど深いわけではないけれど、階段を下りていてどうしてこんな傷が。
転落とはいえ、完全に階段を下りきった後だから、私は身体を起こしながら階段を見上げた。
どこにも切るような物はないはず……と、階段の4段目を見た時だった。
蹴込み板……階段の縦の板が外れて、そこから気味の悪い顔の何者かがこちらを見ていたのだ。