おうちかいだん
怖くて、気持ち悪くて、一刻も早くお風呂に入ってこの血も傷口も洗い流したい。


階段が怖いという気持ちと、自分の身体がおかしいことになっている不安が入り交じって、まともな判断が出来なくなっていた。


「と、とにかくお風呂に入らないと。化膿はこれ以上広がらないよね……本当に勘弁してよ。どうして私がこんな目に……」


なんて文句を言っていても始まらない。


替えの下着とパジャマを持って、お風呂場に向かう為に部屋を出た。


薄暗い照明の中を歩いて、階段にまでやって来る。


やっぱり1番下の段までは照らしてなくて、まるで闇の中に下りて行くような錯覚を覚えてしまう。


今、ここで怖いことがあったばかりだというのに、私の身体にも異変が起こっているせいで、通らざるを得ないんだ。


「何も起こりませんように……南無阿弥陀仏……」


法事でお坊さんが言っていたお経の文言を小さく口ずさんで、階段を下りようとしたその時だった。


階段の下の方。


薄暗い照明に照らされて、なぜか出来た影が、ゆらゆらと揺れているのがわかったのだ。


不可解なのは、影になるような物はどこにもない。


それなのに、影だけが揺れていたのだ。
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