おうちかいだん
声を上げる間もなく、その不気味な顔の何かは、こっちに向かって身体を上下させることなく、スーッと近付いて来た。


手を伸ばし、私を掴もうと迫る。


「ひ、ひっ!」


悲鳴すらろくに上げることが出来ない中で、慌てて扉を閉めた。


距離的に考えたら、扉の内側に衝突していてもおかしくないけれど……何も感じることはなくて。


扉の前で尻もちを突いて、朝一番から感じた恐怖に震えることしか出来なかった。


い、今のは……何?


ここに住み着いている幽霊?


だとしたらどうして私だけが見えてるの?


あんな気持ちの悪い幽霊が、階段を通る私に危害を加えようとしているの?


私は……知ってどうするつもりだったんだろう。


怖いことなんて何もないと自分に言い聞かせるつもりだったのかな。


だけど調べて出てきたのは、私ではどうすることも出来ない幽霊で、そこに潜んでいることがわかってしまっただけだ。


気のせいだとか、考えすぎだなんていうのはもう通じない。


完全に、それはここにいるのだから。


私は私で、どうにもならないという事を証明してしまったんだと、思い知らされることになってしまったんだ。
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