おうちかいだん
「ただいま……」
学校が終わり、家に帰ると、朝に階段の下で吊るされていたお母さんの姿はなくて。
どこにもそんなことが起こった痕跡が見当たらなかった。
「おかえり。早いのね」
「え? お母さん?」
こんな時間にと不思議に感じたけど、私はその声がした台所に向かった。
「お母さん、こんな時間にどうして……」
少し嬉しくなって、台所を覗いてみたけど……お母さんの姿はなかった。
「お母さん……」
朝のあれは私の見間違いだったのか、それとも夢だったのか。
何がどうなっているのかわからないまま、私は何も感じなくなった階段を上がって、部屋に戻った。
もうこの階段では、私に恐ろしいことは起こらなくなった。
もしかしてお母さんが、私の代わりに全てを引き受けて死んだのだろうか。
それにしては、お母さんの遺体がどこにも見当たらなくて。
まだ仕事に行っているんだと自分に言い聞かせながら、不安の中でベッドに寝転がって目を閉じた。
目が覚めたら、何もかも元に戻っていますようにと願いながら。
「リサ! 晩御飯よ!」
その声に目を覚ました私は、急いで台所に向かった。
「お、お母さん!?」
台所に入ると、テーブルの上には私とおじいちゃんの夕食が並べられていたけれど、お母さんの分はなくて。
置かれていたステーキを、私は美味しく食べた。
その日から、お母さんの姿は見なくなった。
だけど……。
「リサ! 早くお風呂に入りなさい!」
お母さんの声だけは、相変わらず聞こえるのだ。