おうちかいだん
一瞬、何が起こったのかわからなかった。


鏡に映っている私は別人。


そういう意識があったからか、鏡の中の私に話し掛けられてもまるで他の人に言われているようで。


だけど、すぐにおかしいと気付き、私は驚いて椅子から転がり落ちた。


「え、な、なに……なんで……」


鏡の中の私が喋った?


そんなことがあるはずがない、きっと見間違いだと思いたいけど、だったら……鏡の中から尻もちを突いてる私を見ている私は何!?


ありえない、あの角度で映るはずがないのに。


「どうして怖がってるの? もっと綺麗になりたいんでしょ? おいで」


鏡の中から手招きをされて、全身に強烈な悪寒が走る。


「は、はわわわわ……」


冷静に考えるなんて不可能だった。


ただ、ここから今すぐ逃げ出したいと思って、必死に部屋の入口まで貼って逃げて。


廊下に出るとすぐにある階段を、文字通り転がり落ちるように下りた。


「はぁ……はぁ……い、今の、なに?」


1階で階段を見上げて、呼吸を整えていると、おじいちゃんが部屋から出て来て、怯えている私を不思議そうな表情で見た。


「何をしとるんじゃミサちゃん」


「か、鏡の中私が話し掛けてきた!」
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