おうちかいだん
「あなたの年齢だと、まだ薄化粧でも全然大丈夫よ。ここにある化粧品だけじゃなくて、リサ自身が、リサに合ったものを使わなきゃダメだけど」


「そっか……お小遣いで少しずつ揃えるしかないね」


最初は恐怖した三面鏡の中の私だったけれど、私がどうすべきかを的確に指示してくれて、私はその通りに動いていた。


下地やファンデーション、チークの使い方や、色の選び方なんかも、私の肌質に合わせて丁寧に。


怖がって悲鳴を上げた私がバカみたい。


「それにしても、どうして鏡の中にいるわけ? 昨日は手が出てたよね」


私が尋ねると、鏡の中の私はフフッと笑って。


ゆっくりと私に近付くと、鏡面が歪んで私の顔が出てきたのだ。


これには流石に驚いたけど……悲鳴を上げるほどの恐怖はなかった。


「別に鏡の中で不自由がないだけの話よ。私はリサが綺麗になる為に存在しているんだから」


そう言って、また鏡の中に戻っていった。


何だか……不思議な気分だ。


普通なら絶対に怖くて、二度と三面鏡を見ないように、叩き割るくらいしそうな恐怖体験のはずなのに、今の私には鏡の私が必要で、そこに存在していることがありがたく思えているよ。
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