おうちかいだん
「ただいま、ねえねえ聞いてよ。学校に行ったらさ、皆私を褒めてくれたの。雰囲気が変わったね、可愛くなったねって」
家に帰るなり三面鏡の前に座って、鏡の中の私に話し掛ける。
「ふふ。それは良かったわ。リサが褒められると私も嬉しいもの」
「それにしても不思議だよね。昨日まではメイクしても『あ、メイクしてるんだね』みたいな雰囲気だったのに、今日は皆褒めてくれるなんてさ」
「口に出してしまうほど、リサが魅力的になったってことよ。でも気を付けてね。魅力的になるということは、色んな人を惹き付けるということよ」
「うん、わかった。ところで私……ああ、鏡の私に向かって『私』って呼び掛けるの何か変だね」
何か別の呼び方はないかと思ったけど、どう見ても映っているのは私で、それ以外に呼びようがないんだよね。
「だったら……ミサで良いわ。ほら、おじいちゃんがそう呼んでるでしょ」
「やだぁ。滑舌が悪くて『リ』って発音できないだけじゃない」
とはいえ、呼び名があるのは助かるからと、鏡の中の私のことを、これからは「ミサ」と呼ぶことにした。
「おーい、ミサちゃん。2階にいるのかの?」
それを決めた矢先、おじいちゃんの声が階段の方から聞こえて、私とミサはクスッと笑った。