おうちかいだん
お風呂に入らなければ臭くなる。


トイレほど絶対的に必要な場所じゃないにしても、熱いお湯に身体を沈める時の感覚がたまらなく好きだから、私にとっては必要な場所になっているのだ。


脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入る。


シャワーチェアをお湯で濡らして座ると、鏡の前の私に少し驚いて身体が震えた。


なんてことはない、いつも通りの私が座っているだけなのに。


昨日の不気味な姿が脳裏を過ぎってしまったのだ。


「1日くらい、頭を洗わなくても大丈夫だよね」


もう、それしか方法を思い付かなかった。


冬場は汗をかかないし大丈夫だろうと。


身体を洗い、シャワーで泡を流して今日はもう終わり。


後は浴槽に浸かって、気持ちよくなって寝るだけだ。


熱いお湯が、冷たい足先をピリピリと刺激する。


じわじわと足の上に上がって行って、全身がその感覚に包まれるのが1日の中で一番気持ちいい。


特に、今日はもう目を瞑る心配をしなくてもいいというのが、その気持ちよさに拍車をかけた。


「今日だけ、今日だけ……なんだよね。毎日これを続けるわけにはいかないし……まったく。一体誰がこんな話をしたんだっての! おかげでいい迷惑だよ!」


首までお湯に浸かり、そう文句を言ったけど……これで安心してお風呂に入れるというのは、間違いだったことをこの直後思い知らされることになった。
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