エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 にこやかなお母さんとは対照的に、榛名先生は終始厳しい表情。しかしそれも仕方がない。

 先生がどれだけ花純をかわいがっていたのか、先週花純を送っていった際に酒を飲みながら散々聞かされた。俺に対しては恨み節のオンパレードだ。

 俺は誠実な婚約者を演じることに徹して色々と恥ずかしいセリフを吐いたが、そのうち酒の勢いも手伝って、建前に本音が入り交じった。

『本当に、かわいらしい……ですよね。先生が溺愛するのもわかります』
『そうだろう? 花純は小さなころから料理が好きで、妻と一緒にキッチンに立っていた。その姿を見ているだけで、幸せな気持ちになったものだよ。しかし花純も年頃になって、結婚に焦りを感じているようだったから、泣く泣く教え子の中で一番優秀だったきみとの見合いをセッティングしたわけだが……それが仇になってしまったな』

 先生の軽い嫌みは俺の耳を右から左へ通り抜けていき、自然と頭の中で像を結んだのは、幼い頃の花純だった。
 
 お母さんの隣で楽しそうに料理をする、今よりチビな花純。

『そんなの絶対かわいいに決まってる……』

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