エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 本気でそう思っているのだろうか。それとも、冗談交じりの自虐?

 どちらにしろ、そんなふうに思われているのは心外だ。さっきは隣にいてくれるだけでいいと思ったが、撤回する。その程度じゃ、鈍感な花純の心はきっと手に入らない。

「なぁ」
「はい」

 俺はシートベルトを外し、ちらりと花純を見る。黒目がちの瞳が不思議そうに丸くなり、その警戒心のない表情に少し苛立つ。

 本気で単なる料理要員のつもりでここに来たなら、それは大きな間違いだ。

 俺はずいっと彼女に顔を近づけ、鼻先が触れ合いそうな距離で告げる。

「お前の最終目標は、自分の料理を俺に振舞って終わりじゃない。俺の心を動かすことだろ? せっかく一緒に住むんだから、料理以外でもその努力をしてみろよ」
「りょ、料理以外?」

 花純は急に接近してきた俺に動揺し、ごくりと喉を鳴らす。みるみうるちに頬が赤く染まり、俺の言葉を理解する余裕はなさそうだった。

 ……なら、嫌でも理解させてやる。

「例えば――」

 言いかけながら、片手をスッと彼女の耳の脇に手を差し入れる。そのまま顔を近づけた俺は、目を閉じて彼女の唇を塞いだ。

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