エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う
花純は息を止めて固まり、微動だにしない。薄目を開けて彼女の表情を確認したら、まるで状況を飲み込めていないように、呆然と目を見開いている。
その反応が少し不服で、俺は小さく舌を出してぺろりと花純の下唇を舐めた。
びくっと肩を跳ねさせ瞳に困惑の色を浮かべる花純に、俺は低い声でささやく。
「こんなふうにいきなり唇を奪ってみる、とか」
「そ、そんなのできるわけ……。っていうか、どうしてキスなんて」
やはり、花純は鈍い。鈍すぎる。キスの理由なんてひとつしかないだろうが。
心の中でそう突っ込んでみるものの、口に出すのは癪なので、俺は一旦体を離してそっけなく言う。
「さあ、どうしてだろうな? 少しは自分の頭で考えろ」
「か、考えてもわからないから聞いているのですが」
「じゃあわかるまで考え続けるんだな。とりあえず、荷物降ろすぞ」
「はい……」
俺が先に車から下りても、花純はしばらく助手席に座ったまま自分の指で唇をなぞり、納得できないと言いたげな顔をしていた。