エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「誰が言うか。残念だが、お前は料理家として大きな挫折を経験することになるだろう」
「だから、そういうことも全部、私の料理を食べてみてから言ってください!」
「はいはい。楽しみ楽しみ」

 まったく、人の神経を逆撫でするのがなんて得意な人なの……!

 私はメラメラと闘争心を燃やしながら、口いっぱいに頬張ったスイーツを紅茶で流し込んだ。


 六本木のビルを出た私たちは、徒歩で麻布十番の商店街へ向かった。これから、司波さんの自宅のキッチンを借り料理を振舞う予定なのだが、その材料を調達するためだ。

 四月下旬のあたたかな日差しを受けながら、目的の店に向かって歩く。その道すがら、面倒くさそうに後ろからついてくる司波さんが言う。

「食材ならスーパーでいいじゃないか。肉も野菜も一度に揃うんだし」
「今日はダメです。信頼できるお肉屋さんじゃないと。ちなみに司波さん、モツの類は食べられますか?」
「……ああ。わりと嫌いじゃない」

 モツと聞いて、しかめ面だった司波さんの表情がやや緩んだ。この様子ならとりあえず、作ろうとしているものを変更する必要はなさそうだ。

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