エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

「男前は男前なんですけど、中身がちょっと」
「おい、聞こえてるぞ」

 声を潜めていたはずなのに、司波さんは地獄耳らしい。不機嫌そうな顔でつかつか歩み寄ってきて、おじさんに向けて口を開く。

「私はアシスタントではありません。ついさっき彼女とお見合いをしたんですが、性格の不一致で破談になったんです。しかし、彼女はどうしても嫁に行き遅れたくないらしく、自慢の料理で私を繋ぎ止めようと必死なんです」
「なっ……! 誰があなたなんかを必死で繋ぎ止めますか!」

 くわっと目を剥いて異を唱えると、司波さんはフンと鼻を鳴らし冷たい視線で私を見下ろす。

「そうやってムキになるのが図星の証拠だ」
「図星なんかじゃないです!」

 肉屋のおじさんは店先で言い合う私たちを見て呆気に取られていたが、やがてにこやかな顔に戻ると、包んでくれた肉をこちらに差し出す。

「よくわかんないけど、ケンカするほど仲がいいって言うし、俺には破談にするのはもったいないくらいお似合いに見えるけどね」
「お似合いって……うれしくないですよ」
「それはこっちのセリフだ」

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