エリート官僚はお見合い妻と初夜に愛を契り合う

 互いの刺々しい言葉でまたしてもケンカが勃発しそうになり、私たちはそろってフンと顔を背けた。そんな私たちを交互に見たおじさんが、困ったように「お代……」と呟く。

 慌ててバッグからお財布を取り出そうとしたら、司波さんが先に「カードは使えますか?」とおじさんに尋ね、素早く支払いを済ませてしまった。

 高価な買い物ではないが、知り合ったばかりの相手に奢ってもらうのはあまり気分のいいものではない。

「お返しします、お金」

 肉屋を後にして、今度は八百屋に向かって歩きながら、私は司波さんに訴える。

「なんでだよ。どうせ食べるのは俺だろう」
「そうですけど……もとはと言えば私の意地で料理をすることになったわけで」
「じゃ、まずかったら返してもらう。それでいいだろ」

 お金は返したいけれど、まずい料理をつくるつもりはない。結局奢られるしかないではないか。

 釈然としないが、これ以上食い下がっても平行線な気がしたので、私は仕方なく口を噤んだ。

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